委員長挨拶
日本柔道整復師連盟委員長 工藤鉄男

日本柔道整復師連盟のホームページをご覧いただき有り難うございます。委員長の工藤鉄男です。

今、日本中がデフレや消費税などの経済を中心とした景気の問題、原発の安全性を含めたエネルギー問題、隣国との安全保障、少子高齢化等の社会保障についてなど、多くの問題にさらされて混乱しています。そして、社会保障の分野に属する我が柔道整復師の業界を取り巻く環境もご多分に漏れず激動の時代を迎えています。しかもその道は、上り坂でも平坦でもなく、気を抜けば転げ落ちてしまうようなかなり急勾配の下り坂だと言っても過言ではありません。日々、新聞やテレビ等の報道に心を折られてしまいそうな方もたくさん居られることと思います。そして、日本中の誰もがこの混乱を一刻も早く抜け出したいと願っていると思います。しかし、こうした混乱の「今を変える」ためには、これまで慣れ親しんだ環境に自ら手をつけ、僅かに安定している「今」でさえをも自ら手放す勇気が必要になります。現状を守ることさえままならない今、何もしなければ、確実に後退することになります。そんな時代だからこそ、新しい発想や工夫に加えて、不明瞭な点や不足している部分を改善する強い意志が必要なのです。

この6月で私も当連盟の委員長就任から一年になりますが、この間に料金改定や卒後臨床研修制度改革への対応など、多くの難題に直面し、それらの問題が複雑に絡み合って単純には解決できない状況にあることも実感しています。しかし、それらの問題を別々に一つずつ対応する時間的な余裕は既にありません。国の改革も速度を速めています。そして、当業界がこれまで手をつけずに先送りし続けてきた「協定の見直し」や「法整備」といった難題にも、時間を空けることなく同時進行で積極的に取り組まねばなりません。しかし、その強い思いとは裏腹に、そのための行動をとる資格者が我が業界にいったいどれだけいるでしょうか?もちろん、それぞれに事情があり、資格者すべてが同じ方向へ動けないことも理解しています。経済的に疲弊すれば、自分のことで手一杯になるのも解ります。しかし、本当に現状を変えたいと望むのなら、自分に有利な方向ばかりを向き、今すべきことに我々が背を向けたのでは、実現させたい夢も我々に背を向けて遠ざかってしまうでしょう。我々が本当に現状を改善したいと望むのなら、現在だけでなく、これまでの経過、周辺の状況などをすべて見直した上で、積み上げてきたものも一度崩し、一から積み上げ直すくらいの強い決意が必要です。自分の都合に合わせて、痛みや苦労を伴わないような改革では、新しい時代へ繋がる夢は実現できません。自分のためだけの理論をいくら振りかざしても大目に見てくれる大らかな時代は過ぎました。この混沌とした時代を乗りきるために、そして永く繋げてきた伝統を守り、日本人の生活や文化と安心できる環境が一つとなった地域社会の中で、我々が最も中心に置くべきは「利他」の精神です。先ず周りにいる他者を救うことで自らを活かしてゆくのです。己の利益優先の私欲に溺れて舵を転ずれば、どんな業界であっても残る道はありません。しかし、我々は実に小さな業界ではありますが、我々を頼りに日本中の接骨院・整骨院に通院してくださる患者さんは、年間で延べ約5千万人に及びます。このことは我々の大いなる励みとなります。そして、これはある意味では我々の業界への評価指標でもあり、実現させたいものへの切符にもなり得ます。

いま日本の人口構造は激変し、高齢化が凄まじい速度で進んでいます。しかし、この高齢化も日本中で均一に進んでいる訳ではありません。高齢化率が高まった地方都市では、生活基盤を支える社会的インフラ整備の財源に余力はなく、高齢者は介護事業者もろとも都市部へと移動し始めています。それに伴って、雇用を求めて現役世代も故郷から離れる傾向が加速し、高齢者だけでなく若者、特に若い女性がこのまま都市部に集中すれば、物価の高い都市部では結婚・出産はしにくく、自ずと少子化に拍車がかかります。今子供が生まれなければ、10年後に10歳の子供は存在しません。そして20 年後に成人する人はいないことになり、これまで当たり前だった風景が維持できなくなるのです。これは同時に日本中で町単位の地域コミュニティが崩壊することを意味しています。高齢者が増えることばかりに着目せず、日本が現在抱える「少子化」を単純視しては、10年後、20年後の未来の姿を正しく見通すことはできません。地域を維持できなければ、人の住む環境、生活が、町ごと消えてしまうのです。

国は今、大病院に患者が集中するこれまでの 医療形態を見直し、在宅・近隣地域での対応を重視した「地域包括ケアシステム」の構築を急いでいます。我々柔道整復師は、47都道府県に統括されたネットワークを持ち、それぞれが暮らす小さな地域で、各地の固有の文化や生活を豊かに繋げられる社会に寄与すべく、災害時の対応・青少年の育成・各種スポーツ等での救護ボランティア・高齢者への歩行や体操教室等を開催し、そして、日々の外傷への対応をし続けてきました。正に我々柔道整復師は、地域社会に深く根付いた医療インフラであることは間違いありません。そしてこの新たな仕組み創りの流れの中で、怪我への施術だけにとどまらず、要介護状態に進まないよう運動器機能の減退を和らげる、これまでの地域支援事業を一歩進めたところにも我々は社会貢献の場を広げる必要があります。この四半世紀に進められた少々いき過ぎた規制緩和による経済最優先の仕組みは、地域住民の安心安全を支える社会保障制度にも確実に暗い影を落としました。もう一度国民目線に立って法や制度の整備をし直さなければ、我が業界の機能不全も進んでしまいます。地域社会のために機能するための活動を行う柔道整復師と、そこに通う地域住民を守るためにも、今こそ皆が意志を重ね共に動かねばなりません。何の活動もせずに夢を叶えることはできません。そのためには理想を現実に変える「大きな力」が必要です。当連盟は、そのために確実に結果に繋げるための活動を行い、確実に実現させるための組織なのです。

いま我々に必要なものは、氾濫する情報の中から正しいものを「調査・分析・判断・決定」して、何が何でも地域社会のために実行することです。そして、それはどんな時代にも適合し得る適応の「力」です。自分でやらなければ誰かが代わりにやってくれることはありません。そして、独りでできることには限界があります。この重要な転換期に、業界が抱える問題に対して、倫理観と公益という全国民が理解し得る視点で捉え、我々が取り組まなければならない課題を正しく分析し、各都道府県の柔道整復師連盟との連携強化や、これまでまったくの個人として業界の存続発展に関与できていなかった柔道整復師にも現状を伝え、業界全体の組織強化にも取り組んで参ります。

最後に、2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まりました。我々柔道整復師には、外傷や運動器系の損傷現場での永い経験と手技があり、これを世界中の人々が集う東京オリンピックの場で活かしたいと考えています。そして、それは競技をする選手達だけでなく、それを支えるサポートの人々にも、またパラリンピックにおいても同じく、さらには応援に来られる観光客の方々をも含め、我々がかかわることが可能なすべての人達を視野にいれた対応を考えています。そして、この大会が開催される僅かな期間だけでなく、それが終了した後も「公益・利他(他の人達のために)」という志を掲げて活動を展開し続けたいと考えています。

また、オリンピックイヤーの2020年は、日本の人口が集中し続けてきた東京の人口がピークとなり、それ以降は急激な人口減少の時代を迎えます。そして2025年には団塊の世代が高齢者となり、日本中の高齢化率も大きく跳ね上がることになります。

日本柔道整復師連盟は、人口減少・高齢化といった方向性をもしっかりとみつめ、これからも時代の変化に対応しながら、地域社会の再生再興に向けて全力で取り組み、公益社団法人日本柔道整復師会の掲げる理想の実現に向けて努力を重ね、国民の皆様が安心して暮らせるコミュニティをつくることを目指し活動して参ります。今後とも会員の皆様、国民の皆様のご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

柔整連プロモーション映像

広報誌「SACRA」